カラテマスターのトマト師匠に師事しながら、勝負を勝ち抜き、トロフィーを12個集めたら勝利を宣言できる(でも負けることもある)というゲーム。
シンプルなトリックテイキング(複数色あるカードから、同じ色のカードを出していき、高い点数を出した者勝ち)なので、同種のゲームの経験者であれば「ああ、アレね」みたいなノリで覚えられます。アレね、というのはボカしているわけではなく、「あんな感じ」「あれかぁ」それぞれの頭にあるのはまったく別のトリックテイキングゲーム。なのにそれでも話が通じちゃうぐらいのありふれ感。
ありふれ、というと「じゃあ遊ばなくてもいいか」みたいな判断に向かいがちなのですが、いやいや、これが面白いのです。
手札勝負に勝つと、勝利ポイントが記されたカードが手に入ります。それがトロフィーです。
あとトマトとナイフも集められます。
ん、ナイフ……?
そうなのです。このゲームにはトロフィーの他に、なぜかナイフ集めというサブ勝利条件があり、この鋭利な刃物も集めておかないと「トロフィーの数がたとえ一番でも、ナイフの所有数が一番少なければ、問答無用で最下位になってしまう」という、わざと日本(トマト師匠、日の丸だし)を勘違いしているとしか思えないような謎ルールがあるのです。なので、全員の持ちナイフの数を常に記憶しておかなければならないメモリー要素もあります(そんなカラテゲーム、聞いたことないよ……)。
でも、そこが面白い。
手札などのクローズド情報は、会話のブレーキになることがあります。
「今の自分の手札、実は5枚とも緑だから、対抗しようとしても無駄だよ」とか「ねえ、手札から、あのカード出してくれないかなぁ」なんてな言葉を、軽く相手に言えちゃう人もいれば、言えない人もいます。
相手を混乱させることを、嫌がらせのように考えてしまったり、
自分の手札につながる情報を漏らしたくないと思ったり。
その点、このゲームは勝敗と関係ないところに話のネタがあるので、会話が盛り上がりやすいのです。
なぜカラテなのか。
なぜ野菜なのか。
なぜナイフなのか。
空手の大会に出てトロフィーを得るのは分かります。普通です。
ついでにトマト(手札を多く手に入れられる効果がついてきます、お得)をもらえることがあるのは、ちょっとイミフですが、まあ、よしとしましょう。
けれど、ナイフ(なんの効果もありません)がついてくるのはなぜなのか?
ナイフがついてくるだけならまだしも、それが勝利条件の一つになっているのは本当になぜなのか!?
さっぱりわからないし、謎というには下らなすぎます。
だからこそ勝負の外側で「空手家たるもの、ナイフの使い方もマスターレベルじゃないとね」「武器もったら、空手じゃないじゃん!」などと、話が弾むのです。
メカニズムとしては、勝利点(トロフィーの数)を集めるだけのゲームだと単純すぎるので、敗北点(?)としてナイフを設定したのだろうと考えられます。
けれど、そこにナイフというモチーフをあてたのが面白い。
そもそもトマトと空手という組み合わせからして、頭のネジが何本か抜けている感があるのだけれど。
勝負そのものはシンプルなトリックテイキングなので、すぐに覚えられるし、脳への負担がありません。
ゲームよりもおしゃべりのほうがメインになってしまっても、ラクラクと遊べてしまうぐらいの低馬力仕様。
スタンダードなものを作るときは、突拍子もないものを混ぜて、受け手の既視感を消すというアプローチがあります。
人は新作にオリジナリティを求めがちな生き物ですが、アナログゲームには、ルールは既存のなにかであればあるほど、実はとっつきやすくてよいという側面があります。覚えやすくて、説明もしやすい。
「空手トマト」は、ルールはありふれているのに、世界観が面白いので、新しいゲームを遊んでいるかのような感覚で慣れ親しんだシステムのゲームに飛び込めるのです。
1stプレイの時にかかる学習コストと楽しさの報酬のコスパがとてもいい。
ありがちなルールに、ユニークな世界観をかぶせることで、新鮮なゲームに変えてしまう魔法。
だからこその、このおかしなテーマなのか。
パッケージのB級感も本当に素晴らしいです。傑作。
- 投稿者:
あすか正太@ぽんこつ団
- 42興味あり
- 240経験あり
- 30お気に入り
- 82持ってる
タイトル | 空手トマト |
---|---|
原題・英題表記 | Karate Tomate |
参加人数 | 3人~10人(20分前後) |
対象年齢 | 8歳から |
発売時期 | 2018年~ |
参考価格 | 未登録 |
ゲームデザイン | ライナー・クニツィア(Reiner Knizia) |
---|---|
アートワーク | ポール・バレイキン(Paul Balykin)ドミニク・ヒューフナー(Dominik Hüfner) |
関連企業/団体 | アミーゴ(AMIGO) |
レビュー 6件
- 66名に参考にされています投稿日:2020年07月05日 18時41分
ヘンテコ野菜の空手カードゲーム。最後にモノを言うのは拳ではなくナイフ!【ざっくり解説】5スート(色)のカードに数値が描かれており、これを使いトロフィーを奪い合うゲームです。5色のカードで競りのような要領でカードを出していき、トロフィーカードの枚数分だけの人数が残るまで続けます。パスした人はカードを補充できます。逆に、トロフィーを貰った人はカードを引くなら勝利点やナイフが少なめになります。勝った人が勝ち続けるのはなかなか難しいゲームデザインになっています。最後に勝利点が高い人が勝つのですが、ナイフの本数が少ない人は問答無用で最下位になります。空手なのにナイフで決着がつくゲームです(笑)。【...
マクベス大佐@ボドゲブロガーさんの「空手トマト」のレビュー - 48名に参考にされています投稿日:2020年04月07日 08時44分
大人数向けだと思います。みんなが『せーの』で行動するため、多人数ボードゲームにありがちな『手番の待ち』がほぼ無いところは良いです。ラウンドごとに勝利者やカードの引きや選択、交換などの処理がめんどうかもしれませんが慣れている人がいればサクサク進みます。
カシスオレンジとスクリュードライバー♂さんの「空手トマト」のレビュー - 227名に参考にされています投稿日:2019年10月17日 23時54分
コロコロ堂で、5人でプレイした感想です。ラマやエルドラド、ケルト、バトルライン、ペンギン・パーティー、交易王などをデザインしたライナー・クニツィアによる、プレイヤーはトマト師匠に仕える野菜で、空手大会に出場しトロフィーを多く獲得しつつ、ナイフもある程度持っているプレイヤーが勝利するカードゲームです。ルールは、他の方のレビューで詳しく記載されているので、私からは省略します。5人でプレイした感想ですが、野菜が空手をしている絵が面白く受けていたのですが、いざ勝負になるととても面白いカードマネジメントゲームだと感じました。今回は2回連続でプレイして、序盤トロフィーを取ることが両方ともままならなか...
Nobuaki Katouさんの「空手トマト」のレビュー - 230名に参考にされています投稿日:2019年02月15日 12時49分
カラテマスターのトマト師匠に師事しながら、勝負を勝ち抜き、トロフィーを12個集めたら勝利を宣言できる(でも負けることもある)というゲーム。シンプルなトリックテイキング(複数色あるカードから、同じ色のカードを出していき、高い点数を出した者勝ち)なので、同種のゲームの経験者であれば「ああ、アレね」みたいなノリで覚えられます。アレね、というのはボカしているわけではなく、「あんな感じ」「あれかぁ」それぞれの頭にあるのはまったく別のトリックテイキングゲーム。なのにそれでも話が通じちゃうぐらいのありふれ感。ありふれ、というと「じゃあ遊ばなくてもいいか」みたいな判断に向かいがちなのですが、いやいや、こ...
あすか正太@ぽんこつ団さんの「空手トマト」のレビュー - 223名に参考にされています投稿日:2018年12月21日 18時00分
今年のエッセンで発売された、クニツィア作品。空手してるトマト…さくっと終わるゲームで、タージマハルやインフェルノと似ているところを感じました。なるほどなー。手札に配られるのは、5種類1~5のカード5枚+トマトカード。真ん中に出される2つの戦利品をかけて戦っていきます(たまたまトマトとナイフしかないカードが真ん中にでていますが、トロフィーのアイコンがあればそれが勝利点です)。プレイヤーは、伏せた状態でカードを1枚出し、全員揃ったらオープンします。トマトカードは脱落のカードで、出した瞬間争いから抜けて手札を補充します。残ったプレイヤー数が3人以上であれば、勝負は続行です。2枚目からは、同じ色...
まつながさんの「空手トマト」のレビュー
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play:gameのレビュー記事2019.02.26https://www.gamers-jp.com/playgame/archives/001951.html#karatetomate(記事より抜粋)同時アクションのゲームとして、非常に優れていると思います。降りるならば最初から降りる方が得策だと考えがちですが、他のプレイヤーに2枚組以上を消費させるという意味で、あるいは最初から多くのプレイヤーが撤退するというラッキーなこともあるかもしれないからという理由で、1枚だけしかないスートを出すのは悪い考えではありません。
けがわさんの「空手トマト」のレビュー