- 5人~11人
- 45分~90分
- 12歳~
- 2022年~
フィード ザ クラーケン白州さんのレビュー
7/10
日本でほとんど話題になっていない正体隠匿系ボードゲーム。
正体隠匿系といっても、アバロンとかレジスタンスのガチ系と、お邪魔者とかBANG!のゆるい系の中間くらいの正体隠匿系。
個人的には、ボードゲームの経験値が高いためか、基本、情報のない最初の方で抹殺されるので、正体隠匿系は正直、好きではないのだが、久々に正体隠匿系で高評価した作品。
まず、コンポーネントが豪華。一応、松竹梅の3段階のクオリティがあるが、竹のバージョンでプレイ。
他のバージョンを見てないので、具体的に言えないが、役職タイルがでっかいコマになってたり、役職がカードでなくて、チップでわざわざ各プレイヤー用の袋を用意してそこに入れてやるという無駄な(褒め言葉)豪華さ(笑)
そんで、2時間とかガッツリかかりそうな見た目しているのに、(プレイ人数が5~6の場合だが)1時間以内で終わって、それが濃厚な体験になっているのがすごい。
ちなみに5~11人で遊べるとあるが、5とか6でも十分楽しめる。正体隠匿系なので、プレイ人数が多いほど面白いが、その分、プレイ時間が伸びるので、どちらを選ぶかは迷うところだ。
ゲーム内容は、基本はスタート位置にある海賊船を動かしていくだけ。
ゴールは3箇所あって、セイラー(船員※人狼でいえば村人)のゴール、海賊(※人狼でいえば人狼)のゴール、カルト信者(どちらの勢力にも属しない単勢力)のゴールがあって、これのいずれかに船がたどり着いたら、ゲーム終了。その陣営の勝利となる。シンプル!
船を動かす流れがユニークで、船長(親)がいて、副船長と航海士を決定する。
船長と副船長は、山札からカードを2枚引いて、そのうちの1枚をカードを入れる専用の箱に入れる。
箱をよく混ぜたら、航海士だけがその2枚のカードを見て、1枚選ぶ。それを公開して、船が進むというわけだ。
マスには必ず、青(セイラーの目的地に向かう)矢印、赤(海賊の目的地に向かう)矢印、黄(カルト信者の目的地に向かう)矢印があって、そのカードに描かれた色の矢印の方向に進んでいく。
基本はこれを繰り返すだけ。
今回、6人でプレイしたが、その場合、セイラー3人、海賊2人、カルト信者1人という組み合わせなので、普通にやれば、セイラーが有利なのだが、そううまくいかないようにできているのが面白い。
まず、配られるカードなのだが、青矢印と黄矢印の方向に向かうカードが5枚ずつしかないのに、赤矢印だけ9枚あるという点。
これのおかげで、セイラーだったとしても、引いた2枚の両方が赤ということもあって、意図せず、赤を出さなければいけない局面が生まれる。これによって、ほどよい疑心暗鬼が生まれる。
マニアックだが、個人的に好きな「いきあたりバッテラ」とかみたいな、本当はこれ出したくないんだけど、ごめんねぇ!みたいな会話ができる正体隠匿系は、もしかしたら好きなのかも。
よくある正体隠匿系って、出す情報に運が絡まないものが多くて、純粋に嘘ありきの論理バトルするのが苦手で嫌なんだけど、それがほどよい運のバランスで楽しくさせてくれているバランス調整が素晴らしい。
これによって、正体隠匿系に慣れていない人でも会話を成立させやすくしており、例えば、赤のカードを航海士がめくったら「今、来た2枚のカードとも赤だった」とか言えるし、船長や副船長も「両方とも赤だった」「赤と黄しかなかった」と、そのプレイヤーだけが知っている情報があるので、会話を出しやすいのはとても好印象だった。
これは、赤だけが他のカードよりも4枚多いという点、青は陣営が多いけど、その方向を選ぶには、19枚中、5枚しかないカードを船長、副船長、航海士がしっかり選ばないと進まないというバランスにできているのがすごい。かなりテストプレイしたんだろうなぁと思わせる見事なゲームバランス。
そして、カードに描かれたちょっとしたゲームの流れが単調化しない効果アイコンも地味に良い。
このゲーム、よくある正体隠匿系と違って、毎回親が変わるわけではなく、カードの効果によって、親が変わる!
つまり、船長や副船長、航海士の3人(特に最終決定権のある航海士!)によって、親を変えるかどうかが、ある程度コントロールできるのである!だから、少しずつ情報がわかってくる後半とかに地味に重要になってくるし、そのカードを誰が選んだか出したかなどの情報合戦につながっているのも面白い。
さらに面白いシステムが「反乱」。
実は、船長や副船長、航海士を決めた後に、毎回、反乱フェイズというのがあるのだが、これを成功させると、船長交代して、副船長や航海士を決め直すことができる。
ただ、これを成功させるには、ゲームの最初に各プレイヤーに配られる3つの拳銃コマを全員合わせて3つ以上出さなければならない。毎回、ぐーで握ってせーのでドン!するので、誰が反乱するのか、公開されるまでわからないが、そう頻繁に反乱はできないし、無駄使いしたくないので、なかなか緊迫する。
ちなみに拳銃コマを一番多くだした人が反乱成功で船長になる権利がある点、全員で3つないと成立しない点(2個以下の場合は各自に戻される)が、交渉みたいな役割も生み出してくれる(例えば、俺は2個出すから、自分が仲間と思う人は1個だしてほしいみたいな)。
最後に面白いと思ったのが、カルト信者の勝利条件。
このゲーム、カルト信者は最初1人なので、めっちゃ不利と思わされるが、黄のカードを選んでしまうと、カルト信者にむちゃくちゃ強いカードが発動する。
例えば、1人の陣営をカルト信者側に変えてしまったり、3人の役職を見たり、3つの拳銃を好きなように配ったりなどなど、チートかよ!?と思ってしまうような効果の数々がゲームを引き締めてくれている。
正体隠匿系の第3陣営って、どちらかというと、そんなに目立たないトリッキーな存在のイメージだが、このゲームでは、チート能力を有しているトリッキー野郎なので、相手陣営と争いつつ、ヤバいカルト信者にも気を配らなければならないのが面白かった。
ちなみにゴールマスはセイラーと海賊は3マスずつあって、条件を達成しやすいのに対し、カルト信者はクラーケンがいるマス(一番奥の最後の1マス)しかなく、傍からみても、初期1人で一番奥の1マスしかないから、キツそうと思うのだが、もう1つの勝利条件がヤバい。
それが、ゲームの後半に海に存在しているクラーケンの足のマス。
だいたい後半に2〜3個(プレイ人数によって変わる)置かれているのだが、ここに入ると、なんと、船長がクラーケンの生贄を決めて、脱落させるというとんでもない仕様があるw
決め方も面白くて、みんなが顔ふせたところに、肩をポンポンするというw 最高w
そして、ヤバいのが、このとき生贄にするのがカルト信者だった場合、その瞬間、カルト信者が勝利するという条件!
カルト信者は、ゴールが厳しい代わりにここで勝利を掴み取ることができるバランスにしているのは見事!
いや、マジで誰選ぶか怖いし、そもそも生贄にされる側もたまったもんじゃない(ゲーム終盤だからそれはそれで盛り上がるけど)。
いや、海を冒険させてくれるボードとかワクワクするし、正体隠匿系なんだけど、論理メインじゃなくて、かなりハードルを下げて気軽にわいわい遊べるようにしてあるし、いろんなアクシデントがどれもうまい感じでつながっていて、苦手意識強めだった正体隠匿系のイメージを払拭させるほどの面白さを持つゲームだった。
ただ、普通に万超えするボードゲームなので、国内ではほとんど流通していないのが残念。
これほど、ストレスや苦手意識なく、楽しく斬新な正体隠匿系が出来たのは久しぶりだったので、結構長文で書いてしまったが、正体隠匿系に苦手意識ある人(自分とか)でも、ボードゲームよりで楽しめたので、興味ある人はぜひとも試してほしい作品。
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