ゲーム学会主催第1回ゲーム作品コンペティション一般部門で優秀賞を受賞した完全オリジナルボードゲーム。「ずらす」「ぶつける」「ひっくり返す」、遊び方の基本はこの3つ。シンプルなルールなのに奥深く、遊ぶたびに新しい発見がある知的戦略ゲームは、リバーシに将棋の要素を追加した完全オリジナル。
以下はボードゲームブック本文で書いたこのゲームの成り立ちです。
「PILEUP REVERSI(パイルアップ・リバーシ)」とは、将棋とオセロの要素をあわせもった対戦型戦略ゲームです。ルールも簡単なので専門的な知識がなくても楽しめます。
現在の「PILEUP REVERSI」になるまでに何度もバージョンアップを図りました。初代バージョンの「DENPA」を考案したのは2001年11月。その後、ゲーム学会第一回ゲーム作品コンペティション一般部門で優秀賞受賞したバージョンに改良に改良を重ね、約12年の歳月を経て、やっとみなさんに紹介できるゲームとして完成しました。
このゲームを考案するきっかけは、「挟むこと以外でコマをひっくり返すリバーシ(オセロ)を作ることはできないのだろうか?」という疑問です。これに対する答えを出すまでの最大の障害となったのが「コマを置いていく」という先入観でした。コマを置いていく限り、どう考えても挟むことが最もスマートな方法に思えたのです。
しかし、リバーシのボードとコマを使って試行錯誤していたある時、コマの置き場所を間違えて数マスずらしたことで、ひらめいたのです。
コマを「置いていく」のではなく、コマは「置いてある」とすればどうだろうか?
すると、コマを「ずらす」、あるいは、ずらしたコマを「ぶつける」という方法がすぐに生まれました。ずらす、つまり、移動して相手のコマにぶつけることで移動エネルギーが伝播し、その力でコマがひっくり返るのです。玉突き衝突された車がひっくり返っているイメージが頭に浮かびました。当初、このゲームに「DENPA」と名付けていたのは「伝播」という意味からでしたが、最終的には「車の玉突き衝突」という意味から「PILEUP」にしました。
コマのひっくり返し方を思いついたあと、適当にリバーシのボードの上にコマを置いて遊んでみたのですが、同じ種類のコマだけでは勝敗がつかないことがわかりました。そこで、特別なコマを1つ置いて、そのコマがひっくり返されたら負け、というルールを作りました。
その特別なコマが「キング」です。キングの登場で、このゲームがリバーシでありながら将棋の要素ももつことになりました。キング以外のコマは、王の命令の下で動く兵士という設定で「ソルジャー」と名付けました。ソルジャーとキングは同じ動きにしたのですが、これは、キングに「無能な王」というキャラクターを設定したことから来ています。
次に生まれたコマは「クイーン」でした。キングとソルジャーだけではゲームにダイナミックさがないため、長距離移動が可能なコマを加えたのです。表向きは「勇猛果敢な女王」という設定ですが、裏のイメージは「行動範囲の広いパワフルなおばちゃん」です。
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しかし、リバーシのボードに設定されている四角いマスでは縦横斜めの8方向で考えなければならず、楽しさ以上に疲れてしまいます。ならば、戦争シミュレーションゲームでよく使われている六角形のマスを使ったらどうだろうかと考えました。そうして、6方向型の「PILEUP REVERSI」のボードが生まれました。
ゲーム学会の第一回ゲーム作品コンペティションには、1人当たりキング1個、クイーン1個、ソルジャー11個の王冠型配置で出品しました。この時、コマが団子状に集まり動きがなくなってしまいやすいという批評をいただいたので、新たに「ジャック」というコマを作りました。将棋の桂馬のようなイレギュラーな動きをし、敵味方関係なくひっくり返します。ジャックは「狂戦士」の設定です。
さらなる展開のダイナミックさを求めて作ったコマが「アブソーブド・フォウマン」です。ひっくり返した対戦相手のソルジャーのコマを、自分の奴隷として最前線で戦わせるのです。そこから逃げようものなら後ろに控える正規兵から射殺されるので、必死で戦わなければなりません。必死だからこそ、正規兵より大きく動く「奴隷兵士」という設定にしました。
キングとソルジャーは動きが同じなので、コマの種類は実質4種。これは将棋の半分です。たったこれだけのコマの「ずらす」「ぶつける」「ひっくり返す」というシンプルな動きから紡ぎだされる奥深い戦術を、ぜひ楽しんでいただければと思います。