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スタッフブログ

奈良県橿原市
連敗と笑顔と、やさしさの午後

今日はちょっとのんびりした午後だった。

お店の空気も穏やかで、ゲーム棚を眺めながら「たまには自分でもルール確認しとこうかな」なんて思ってたところに、カラン、とドアのベルが鳴った。


「こんにちはー」と入ってきたのは、おひとりのお客さん。初めての方っぽい。

雰囲気は落ち着いてて、でもどこかやわらかい感じの人。


「一人でも遊べますか?」

もちろん、大歓迎だ。


それで、せっかくなので「よかったら一緒にやります?」と声をかけたら、「いいんですか?」とちょっと驚いた顔。でもすぐにニコッと笑ってくれて、そのまま二人でボドゲタイムに突入。


この時の私は、まだ知らなかった。

このあと見事に全敗することを……。



第一試合:KLASK


まずはウォーミングアップ的に《KLASK》。

磁石でコマを動かして、ホッケーみたいにボールを打ち合うアクション系2人用ゲームだ。


ルールはめちゃシンプルなので、初対面の方とやるにはちょうどいい。

「初めてなんですよ」と言うお客さんにルールを説明して、いざ、試合開始!


が。

なぜか私のゴールにボールがどんどん吸い込まれていく。


「初めてって言いましたよね!?」と聞きたくなるくらい、手つきが自然。

こっちは磁石のコマがテーブルの端っこにくっついて身動き取れなくなってるのに、向こうはスイスイ狙い撃ち。


結果、ボロ負け。


「え、これ面白いですねー。反射神経ゲーって燃えますね」

……それ、たぶん得意な人の感想です。



第二試合:バトルライン


「今度はちょっと趣向を変えて」と持ってきたのは、ライナー・クニツィアの名作《バトルライン》。

9つの戦場でカードを出し合って、より強い役を作る2人用ゲーム。


これならワンチャンある。むしろここが私のホームだ。


と、思っていたのだけど。


「これも初めてなんですよね」と言いながら出してくる手が、全部理詰めで美しい。

こちらがようやく1ライン取ったと思ったら、その次のターンでストレート完成させてくる。こっちが手札悩んでる間に、スッスッとカードを並べていくあたり、もう完全に“できる人”の動き。


「カードゲームは結構やってたんですか?」と聞いたら、

「はい、TCGとかけっこうやってて。頭で考えるタイプのゲーム、好きなんです」

とのこと。


納得。というか、今のところ負け続き。笑うしかない。



第三試合:マンダラ


気を取り直して、最後に出したのが《マンダラ》。

カードの色をうまく集めて、自分だけの得点ラインを作っていく、ちょっと変わった2人用ゲーム。ビジュアルも綺麗で、個人的にお気に入り。


これはさすがに、経験の差が出る……はず!


だったのに。

やっぱり負けた。しかも結構な点差で。


「おお……また負けた……」と天井を見上げた私に、

「すみません」と、お客さんがちょっと照れ笑い。


いや、むしろありがとうございます。

こちらとしては、負けたけどめちゃくちゃ楽しいです。



負けるのも、また楽し。


連戦連敗。

普通だったらちょっとヘコんでもおかしくないけど、不思議と清々しい。


というのも、お客さんと一緒にゲームで盛り上がって、笑って、ちょっと悔しがって、また笑って……っていう、その時間がめちゃくちゃ心地よかったから。


ボードゲームって、勝ち負けもあるけど、それ以上に「一緒に遊ぶ」っていう時間の面白さが本体だと思う。


そして今日みたいに、自分が全敗しても、そのことでお客さんが笑ってくれて、こっちも笑って、それでまた「今度はこれやりましょうか」なんて次のゲームを探し始める時間が、何より幸せだ。



また来てくれるといいな。


帰り際、お客さんは「今日はありがとうございました」と笑顔で言ってくれた。

こっちこそ、本当にありがとうございました……!


できればまた来てほしい。

そしてまた一緒に遊びたい。

その時までに、ちょっとは練習しておこう。いや、真面目に。


いやー、それにしても、完敗だったな。

まさかここまでとは。笑



そしてそして。やさしさが見える午後。


連敗したあの午後のあと、すぐにまた扉が開いた。

カラン、と心地いい音がして、新しいお客さんが来店された。


若い男女のおふたり。

もしかしたらカップルかな、という距離感。

少し緊張しているような、それでも楽しみにして来てくれたのが伝わる、そんな空気をまとっていた。


すぐに席に案内して、簡単にボードゲームの紹介を済ませて、私は少し距離を取った。

ふたりの様子を少し離れた場所から、静かに眺める時間が生まれた。



伝えようとする姿。


彼氏さんの方はボードゲームに慣れている様子で、

彼女さんの方は、たぶんほとんど触れたことがないのだろう。

手に取るカードの動かし方も、コマの扱いも、最初はおそるおそるだった。


それでも、ふたりの間にピリピリした感じはまったくなかった。


彼氏さんは、何度もゆっくりルールを説明しているようだった。

身ぶりを交えて、時には盤面を指さして。

彼女さんは頷いたり、困ったように首をかしげたり、でも次第に笑顔が増えていった。


声はあまり聞こえなかった。

でも、その場に流れる空気に、やさしさがしっかりと染み込んでいた。



ボードゲームに流れる、静かな時間。


ゲームが始まってからも、彼氏さんは慌てることなく、ずっとゆっくりとゲームを進めていた。


彼女さんの手が止まるたびに、ほんの少しだけ間を空けて、

たぶん「大丈夫だよ」「焦らなくていいよ」と伝えていたのだと思う。


その空気を見ていて、「ああ、こういう時間ってすごく大事だな」と思った。


ボードゲームって、つい「うまくやること」や「勝つこと」に気持ちが向きがちだけど、

今日のふたりを見ていると、それよりも「一緒に楽しく過ごすこと」に重心が置かれているのが伝わってきた。


勝ち負けじゃなく、わかる喜び。

うまくできたときの笑顔。

ルールを越えたところにある、気持ちのやりとり。


そこに流れていたのは、「遊び」ではあるけれど、それ以上のやさしさだった。



言葉の壁を越えるもの。


彼女さんは、見たところ外国の方だった。

おそらく日本語は得意ではなさそうだったし、ルール説明もきっと一筋縄ではいかなかったはず。


それでも、ふたりの間にはちゃんと理解と安心があった。


ルールを伝えようとする時間。

それを受け止めようとする時間。

そして、一緒に「できたね」と笑い合える時間。


言葉が違っても、経験が違っても、「伝えたい」「わかりたい」という気持ちがそこにあれば、ちゃんと通じるんだと、改めて思わされた。


ボードゲームって、そういう“間”をつくる力がある。

言葉で埋められない隙間を、コマやカードがそっと埋めてくれる瞬間がある。



見送ったあとの、あたたかさ。


しばらくして、ふたりは席を立ち、そっと帰っていった。


声を交わしたわけではなかったけれど、その背中からは「楽しかった」という余韻がにじんでいた。


店内に残った、ほんのりあたたかい空気。

テーブルを片付けながら、思わず私の顔にも笑みが浮かんだ。


ほとんどおしゃべりしなかったけれど、すごくいい時間を見せてもらった気がする。

きっとこの日のことは、ふたりにとっても、静かに心に残る体験になるんじゃないかなと思った。



ゆっくり、ていねいに、遊ぶということ。


ボードゲームって、勝っても負けても、ルールを忘れても、なんとかなる。

大事なのは、「誰と」「どんなふうに」遊んだか。


今日みたいに、ゆっくりていねいに誰かと向き合いながら遊ぶ時間は、

ゲームそのものよりも、もっと深いところで記憶に残っていく。


言葉が通じなくても、経験がちがっても、

誰かのために、ゆっくり説明してあげようと思える時間って、きっとそれだけで尊いものなんだと思う。



というわけで、今日は連敗を重ね、お客様と笑い、そして、あたたかさと楽しさをしっかり味わった一日でした。

こういう時間に立ち会えるから、この仕事はやめられないなって、また思ってしまった。

たまご
ボードゲームスペースdotto
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