《宇チュー飛行士になりたいネズミたちの破茶滅茶レース♪》
【テーマ背景】
ガラクタ置き場のネズミたちが、ロケットを作ってチーズの月へ向かうという宇チュー飛行士(名訳ですねw)がテーマ。まるで絵本のような世界観がワクワクさせる。
デザイナーは、ガブリエレ・オーシエロ(Gabriele Ausiello)とヴィルジーニョ・ジーリ(Virginio Gigli)の2人。このうち、ヴィルジーニョはイタリアのデザイナー集団「アッキトッカ」のメンバーであり、私の好きな「ゴーレム」や「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」などを作った有名なデザイナーだ。
【ゲーム概要】
各プレイヤーは2匹の大人ネズミを持っており、これらを1〜3マス移動させてガラクタ置き場の道を進んでいき、途中でロケットの材料(ブリキ缶、電卓、ふくらし粉、レモン汁)や電球、リンゴの芯、チーズなどを集める。
ロケットの建築を行いつつ、ロケット発射場まで辿り着いたネズミは、宇チュー飛行士としてロケットに乗り込み、その後、子供ネズミが大人になり再びスタートから進める。
いずれかのプレイヤーが4匹のネズミ全てをロケットに乗せるか、8つ目の得点マーカーを置いた時点でゲーム終了。最も得点の高いプレイヤーの勝利となる。
【大量のネズミがワチャワチャ進むレースが楽しい!】
各プレイヤーは各々複数のネズミを同時に進めていく。この時、ネズミ1匹だけを動かす場合は1〜5マスを自由に進め、2〜4匹を動かす場合は1〜3マスだけ進める。ただし、動かしたネズミは同じ色の別々のスペースに止まる必要がある。
また止まるスペースに他のネズミが止まっていた場合は、チーズ一つをそのプレイヤーに支払う必要がある。そのため出来るだけ他のネズミのいない場所を探すのだが、最大20匹ものネズミがガラクタの道を歩くことになるのでそんな場所はない。
「あー!そこ行きたいのにー。」
自然とブツブツ文句を言いながらチーズをやり取りして進むワチャワチャしたレースになるのだが、それが妙に楽しいw
【リソースを集める方法は色々あり悩ましい!】
ロケットを完成させるためには、それぞれのパーツをまず建造する必要がある。それぞれに必要な資源があるのだが、これらの資源はガラクタ置き場の道のマスに止まると獲得することができる。
この資源の集め方にも多様な方法が用意されていて非常に面白くできている。例えば、道の上の方にいくほどに1マスでもらえる資源が増えるので、1匹のネズミを最大の5マス進めてとにかく上を目指す方法や、電飾マーカーを進めて資源のもらえる数を+1する方法など、色々な戦略が選べるのが楽しい。
【コミックの特殊効果で戦略性が深まる】
ボード下部のネズミの巣穴には図書館があり、ネズミたちはロケット開発に役立つ知識をコミックから得ているらしいw
図書館へ行きこのコミックを入手すると、様々な特殊能力を獲得することができる。トンネルによるショートカットが可能になったり、必要な資源が安くなったりするのは戦略性が深まりなかなか面白い。
<スーパーラット>
またオプションルールでは、ネズミ駒をスーパーラットへ変身させるコミックもある。スーパーラットは4種類あるが、どれも強力な能力を持っており、勝敗をひっくり返す可能性があり場を盛り上げてくれるだろう。
【得点トラックは早取りのレース!】
ロケットの部品は完成した順番にゲーム終了時に高い得点がもらえる。つまり各部品ごとのレースとなっているため、他のプレイヤーよりも、とにかく早くたくさん作ることが大事なのだ。
またチーズを10個集めた順番や、電飾マーカーを進めた順番、宇チュー飛行士になった順番など、全てがレース要素となっているので、どのトラックに注力していくのかを考える戦略性の高さも魅力的だ。
【プレイ記】
自宅のボドゲ会で、長男、次男、三男、私の4人プレイで楽しんだ。
とにかく複数のネズミを操って資源を効率良く集める次男は、電飾マーカーも上手に使い次々とロケット部品を完成させた。これに対して長男はロケット部品の製造は無視して、次々とネズミを宇チュー飛行士としてロケットに乗せるプレイを見せた。また巣穴のネズミもグルグルと上手く回していた。
私はコミックの特殊能力を早々と手に入れるも、全てを満遍なく行う中途半端なプレイングで今ひとつな結果。三男は、なぜかチーズに異常な執着を見せ、兄たちにチーズを配ってご満悦の様子だった(笑)
ゲームはとにかくネズミを突き進める尖ったプレイを見せた長男の勝利。それでも次男と僅差の勝負となり、プレイ中も誰が勝っているのか全く分からず、集中力も欠けることなく全員が最後まで楽しめた。
<良いところ>
- 「チーズの月を夢見る宇チュー飛行士」というテーマが絵本のようで可愛らしい。
- 複数人数ではワチャワチャした賑やかなレースとなり楽しい♪
- 戦略が幅広く、コミックの特殊能力なども面白い。
<悪いところ>
- 非常に堅実な作りなのだが、尖ったところがなく平凡に感じるかも。
<説明書&対象>
説明書:14ページ。インスト:15分、プレイ時間:60分(4人プレイ)
BGG Weight: 2.25(2023/5/31現在)、中量級。
絵本のような可愛らしいテーマを好きになれるかどうかで評価が分かれそう。言語依存がなく、テーマ的に小学生でも安心して遊べる上に、大人でも戦略性の幅広さで楽しめるだろう。
【感想】
非常に可愛いテーマとワチャワチャするレースが楽しい作品。それでいて色々な戦略を試してみたくなる作りはお見事。インタラクションも適度にあって楽しい。
他プレイヤーのネズミがいるところに移動するとチーズを支払わないといけないが、チーズは意外とたくさん手に入るので嫌な気持ちにはならない。むしろ払ったり払われたりするところも楽しめる。個人的には三男が手にいっぱい持ったチーズを、嬉しそうに兄たちに配っている姿が印象的で面白かった。
あえて欠点を挙げるならば、とても堅実な作りで安心感はあるのだが、それゆえ意外性がなく平凡であるようにも感じる。だがランダムなイベントを盛り込むとパーティゲームになってしまう可能性もあるので、そこは難しいバランスなのかもしれない。
ダイスを使わず敢えて運要素を排除したのは、あくまで戦略性の高いユーロゲームとして子供から大人まで幅広く楽しんでもらいたい、というデザイナーの狙いを感じるし、上手く表現されていると思う。
4人プレイでも60分で終了し、幅広い層で楽しめるためオープン会などでも重宝する作品であるし、ボード裏面に道タイルをランダムに置く可変ゲームも用意されているため、これからも末長く遊べそうだ。