2019年末リリースのVital Lacerda作品。私はEagle Gryphon Gamesからリリースされた氏の作品は全て所有しその他のパブリッシャーからリリースされたCo2、Kanbanともにプレイ経験があるのだが、どのゲームも大好きだ。だが結論から言うとこのOn Marsはその中でも特に気に入っている。
まずはコンポーネント。Eagle Gryphon Gamesの大箱には内箱が元々付属しているのだが、正直言ってちょっと使いづらいものが殆どだ。カードをスリーブに入れると入らない、どこに何を仕舞うのかわからない、セットアップの際に役に立たない、そもそも全部入らない、などなど。だがこのOn Marsの内箱に関してはかなり使えるレベルにまで仕上がっている。まだ100点とはいかないが…。そして相変わらず内容物の見た目は良い。カード類は脆く傷つきやすいが、裏から表が多少透けてもゲーム上は全く支障がないのでここのコストを削るのは問題無い。木駒や各ボードの出来はとても良い。Ian O'Tooleのアートワークも素晴らしい。
ゲームのルールは覚えることが多いが、各アクションの手順に関してはそれほど多くのステップが無いため覚えやすい。The GalleristやEscape Planは1アクションの手順が非常に多くしかもメインボード上に記されていないためプレイヤーエイド無しでプレイすることはほぼ不可能に思えたが、On MarsではVinhosほど簡単ではないにしろ、たまにサマリーを確認する程度で大丈夫だ。インストは難しいがアナクロニーほどは時間が掛からないだろうと思われる。私が初めてインストした時は50分程度で終えることができた。細かい重要な部分が間違えやすいゲームなので、インストは時間をかけて丁寧に行う方が良いだろう。
ゲームの進行はラセルダ得意のメインアクション+エグゼクティブアクション方式。リソースを消費してメインアクションの効果を増幅させることもできる。この辺りはThe GalleristのシステムとKanbanのシステムのあいのこのような感じだろうか。重ゲーにおける1手番2アクションは好みが分かれるところだろうが、ソリティア感は無いので個人的には問題なく感じる。むしろ戦略に深みが出るので歓迎だ。
システムはワーカープレイスメントを基本にしたアクション選択制。ワーカーの配置が必要なアクションとそうでないアクションがある。配置したワーカーは次にプレイヤーがそのエリアに戻る時まで帰ってこない。ラセルダのゲームではワーカープレイスメントのシステムが殆どのゲームで使われているが、どのゲームシステムにも高い独自性が見られるのが特徴だ。Vinhosでは距離と税金の概念があり、Kanbanでは移動順と効果の異なるアクションスペース、The Galleristはキックアウトがあり、Escape Planはアクションスペースまでの移動が1つのフェイズを形成している。このOn Marsでは、プレイヤーは地表と軌道上のステーションを往来し、今いる場所によりアクセスできるアクションが異なる。その往来自体も効果のあるプレイヤーオーダートラックの占有の仕合になり、つまりプレイ順決定までもがワーカープレイスメントだ。また、ワーカーは基本的に帰ってこないし、アクションスペースが全て埋まってもアクションが行えるというのも特徴の1つとなる。このOn Marsにおいても独自性の高いワーカープレイスメントというこれまでの作風が踏襲されている。
何より気に入ったのがプレイ感だ。得点の取り方が多岐に亘り、非常に遊びごたえがある。濃密なプレイ感で、それでいてプレイ時間は2時間そこそこで終えることができる。これほど面白い重ゲーは時間泥棒になることが多いが、プレイ後に「あれ?まだこんな時間?」と感じた重ゲーは本作が初めてだと思う。これまでの作品も素晴らしかったラセルダ氏だが、更に研ぎ澄まされてきたのかと感心させられた。
10/10点!