二人プレイ時の感想を書きます。
ローズ・ダムールは、バラ園の経営者となりバラを育てながら、広告などの収入でより大きな園へと拡大させていくワーカープレイスメントゲームです。
インディーズゲームですがパーティー感は無く、程よい選択肢の中から最適解を探していくゲーマーズゲームです。
春→秋→春→秋→春→秋と6つのラウンドを重ね、各ラウンドで中間決算を行い、ゲーム終了時には最終決算を行なってRP(勝利点)が最も高いプレイヤーが勝利します。
基本は
・バラをマーケット(場札)から買う
・施設を建設して定期収入を増やす
・従業員(ワーカー)を増やす
・広告を出して広報レベル(定期収入)を上げる
の4アクションを繰り返して、自分の「ガーデン」エリアにあるバラを増やして中間決算で勝利点を得たり、セットコレクションを達成してまとまった勝利点を獲得します。
アクションはワーカープレイスメントなので早取りの要素はありますが、あくまでコスト面の問題に抑えられており、基本的には後からでもお金をかければアクションは実行できます。
このゲームの面白いところは、各バラに0〜4の「管理コスト」が設定されていることです。
ワーカーはアクションのために使用しますが、バラの世話係として「アクションしなかったワーカー」を管理コストぶん残しておかないと、バラが枯れてしまう(捨て札になる)のです。
そのためバラを世話するためのワーカーを増やすアクションが必要になりますが、ワーカーを雇うと今度はより多くの賃金がかかります。
賃金を支払うためには広報レベルを上げて収入を増やす必要があるのですが、レベル上げにはバラを増やさなければならない。
この相互関係にある各アクションのバランスを考える、なかなかやり応えのある経営シミュレーションに仕上がっています。
「バラが増えるとより多くのアクションしないワーカーが必要になる」という独特の仕組みにより、ワーカーは増えているのにアクション数が増えない、というオモシロ苦しい状態が発生します。プレイヤーは1アクションを増やすために高コストの強いバラを諦めたり、ギリギリの資金をやりくりして新たな従業員を雇うわけです。もちろん収入のためにカフェや即売所を建設しなければならない。かなりリアルに経営者の苦悩を味わえると思います。
バラに関するルールも再現性が高いのが特徴です。
バラは三段階の成長過程を持っていて、1〜2ラウンドかけて咲く(定期的な勝利点になる)買い方と、即座にガーデンに咲かせられる買い方があります。
当然すぐに咲く方が有利なので高い買い物になりますが、金策は調子に乗るとすぐカツカツになります。
返り咲きも再現されていて、バラの見頃である春は安定していますが、秋には条件を満たさないと咲かない(勝利点にならない)バラもあり、購入のタイミングにはいつも悩まされます。
こういったワーカーが増えているようで増えないルールのため、拡大しているのに最終ラウンドの秋もほとんどアクションできない状態になったりします。次のラウンドに向けたバラの管理と経営計画。上手くハマった時の気持ちよさもあり、拡大再生産のひとつの弱点である「最終ラウンドに向かうほど選択肢が多すぎてごちゃつく」といった展開にもならず、非常に収束性の高いスマートな作品かと思います。
勝利点源となるのは、主にバラの様々な特徴が一致するものを集めるセットコレクションです。「白いバラをX枚」とか「作出国がアメリカのバラをX枚」などなど。
しかしバラのマーケットは完全にランダムで、ラウンド終了時に全更新されてしまうため、かなり一期一会のバラ集めになります。前述したようなカツカツ経営計画の中に、突如として欲しいバラがマーケットに登場するので、少ない手数でどう確保するかにジレンマがあります。この辺りは運の要素にも傾くのであまり好きでない人もいると思いますが、ランダムな要素がリプレイ性にも繋がっていて、やる度に新しい戦略が必要になるのは楽しいポイントです。
イメージとしては「ウイングスパン」に近いと思っています。あれをもう少しエキスパート寄りにした、と言えばやりたくなる方もいるかなと。
戦略は低〜中コストバラのセットコレクション戦略と、高コストロマン戦略があります。
多くの場合、低コスト帯でなるべく多くのバラを集めてセットを作っていくのが分かりやすく楽しい戦略かと思います。高コストはかなり時の運に左右されるので難しいですが、例えばソロプレイで高みを目指すのが好きなプレイヤーなんかは、ロマンに浸ってみるのも一興です。
近年の流行りに乗った「数多の選択肢から選ぶ楽しみのある拡大再生産」と違い、「基本的にはやるべき事、やりたい事が分かっているけれど、同時には出来ない。出来ないからその順番を緻密に判断していく」タイプのゲームだと思います。とても初心者や重量級の入り口にいるプレイヤーにお勧めできる作風ではないんですけど、その再現性の高さというか、テーマ性もしっかり包括された完成度になってるカッコいいゲームなので、こなれたゲーマーには挑戦してもらいたいなと思います。インディーズゲームならではの、作り手の手作業の努力が伝わってくる良い重ゲーですよ。
1〜3人プレイだと簡単なオートマの処理が必要になりますが、大きなプレイ感の変化は無いように感じました。1人や2人でのプレイ環境が主となる人にもオススメできます。
コンポーネントはちょっと良い素材を使った同人ゲーム、くらいの質感ですが、各情報が感覚的に非常に分かりやすく分布していて、見た目よりずっと遊びやすいゲームです。
何より全98枚のバラカードがオールユニークでオリジナルイラスト、というのが凄いですね。
全て実在するバラの特徴となる情報を正確に再現していて、この枚数比のバランスから逆算してセットコレクションの各得点も設定しているんじゃないかなと。大袈裟に言えば「薔薇のウイングスパン」とも呼びたくなるような情報量です。
ワーカーの管理に独特の趣がある悩ましいゲームなので、ちょっと新しいメカニクスに挑戦したい人に、是非とも遊んでもらいたいです。