「蒸気の時代」のような、従来の鉄道ゲームではありません。お金、資源、株式など一切使わないパラメーター式輸送ゲームです。拡大生産型の派手な利益や効果を求めるゲームでもありません。
個人ボードの制御パネルです。VPの取り方なんですが…
↑ この「乗客&リンクVP」をできるだけ全部埋める。もし全部埋まった場合、(このユニットだけでも)、終了時VPとして、ピンク2×3+薄紫2×3+赤3×3+紫3×3、それに、(リンクは大体10個位になるので)+4×10で、合計70VP。70VPなら、このゲーム、優勝ラインなので、下のカードVPなどに通勤客を回す必要はあまりない。インスト時ここを伝えないと、初見の人はロボットの拡大生産に走って、VPが取れなくなってしまう。
金(事務課)、鉄(建設課)、銅(技術課)の3種類のロボットとピンク(専門家)、薄紫(営業マン)、赤(外交官)、紫(職人)の4種類の通勤客が共存しています。
ロボットは主にアクションを強化する時に役立ち、通勤客はVPに役立ちます。
この7種類のミープルを個人ボードに嵌めていくだけです。嵌め方は、地下鉄に乗せ、目的地の駅で降ろすこと。目的地の駅とは、乗客と同じ色の駅です。(金=倉庫、鉄=工場、銅=研究所、ピンク=事務所、薄紫=店舗、赤=大使館、紫=スタジオ)
個人ボードは、嵌めるミープルの色指定がしてあるスロットばかりです。
↑ 制御パネル左側。アクションは9種類。それぞれアクションの大きさを表している。この写真だと、上から、線路を2枚置く、2リンク(2駅分)移動する、乗車人数4人(アクションではない)、2人乗車できる、2人降ろせる、今いる駅に客を2人補充、制御パネル内のロボットを2人人事異動…
手番では2アクションできます。できれば写真のように「追加アクション」を一列埋め、アクション数を1増やし、3アクションにしたいのですが、序盤からロボットを4人注ぎ込むのは時間が掛かり、危険です。スタート時は、金、鉄、銅のロボット一人ずつしか持っていないので、コツコツロボットを集めて、パラメーターを上げていきます。また、新駅を作ると、その色のミープルが1人、タダで貰えます。つまり、地下鉄に乗せて運ぶという手間を掛けずに1人嵌め込むことができます。これは輸送網ができていない序盤は非常に助かります。
つまり、序盤の目標は、駅を作ることです。ロボット駅は簡単に作れますが、通勤客の駅は、「駅建設」スロットに金ロボットを嵌め、かつ、左下のコントロールパネル「駅ロック解除」に2人ロボットを置かねばなりません。
例えば鉄と銅の2人を嵌めると、ピンクの駅を建設でき、ピンクの市民が現れ始めます。このロックを解除していないプレイヤーは、ピンクの乗客を自分の地下鉄に乗せることはできません。
この新駅の数も各色1〜2個しか無いので早取りです。
↑ 右上に紫の駅がある。オーソドックスにいけば、この紫が一番最後に登場する色の駅だ。したがって紫ミープルは獲得が難しい。真ん中あたりが中央・総武線みたいになっているが笑、これがこのゲームの奥ゆかしいところで、他人のラインを邪魔せず、重ねて複線にすることができる。だから透明タイルなのだ。
インタラクションは、先ほどの駅の早取りと、この4色の通勤客の早取り。ソロプレイ感が強いと思われますが、とんでもない、通勤客の総数は、プレイ人数で割れば、もの足りないくらいです。例えば4人プレイだと50人しかいないので、計12人取れたとしても、駅建設にピンクと薄紫が一人ずつ必要なので、計10人では、一枚目の写真のパーフェクトが既に不可能であることが分かります。
通勤客は熾烈な取り合いとなります。
勿論、ロボットも序盤は取れるだけ取りたいです。しかし、通勤客が現れたら、すぐに通勤客を取りに行くのが本筋です。例えて言うなら、「ティカル」の財宝トークンです。財宝が出たと分かったら神殿を放って真っ先に取りに行くように笑
ロボット3色は、どこかで見切りを付けなければなりません。この見切りを付けるタイミングこそが、このゲームの肝だと思います。
ロボットを集めるのが重要ではなく、ロボットが序中盤に作った制御装置を敢えて「壊す」のが、このゲームの本当の狙いです。その破壊のアクションが「再配置(調整)アジャスト」です。このアクションで、既に配置しているが一時的に使わないだろうというロボットを外してしまい、現時点で必要なアクションユニットに組み替えます。これによって、ロボット3種の輸送を中止し、もう増やすことをやめ、その手数を通勤客4種の輸送に回し、狙いを切り替えます。
ポイントとしては……
■中盤のアジャストの例として、必要十分な数を取ったピンクを再びロックするとか、メインアクション部のロボットを一時的に「駅ロック解除」に置き、すぐ戻す、とか、3アクション状態で、3アクション目に「追加アクション」のロボットを外すなどの技もあります。
■「線路」アクションと「移動」アクションは反比例します。線路は、一アクションで敷ける線路タイルの数で、序盤は2以上欲しいですが、線路がほぼ敷かれた終盤は、移動アクションが2以上欲しいです。両方同時に強くする必要はないと思います。(できるだけロボットで贅沢しない笑)
■「移動」では、リンクの長さは関係なく、駅ごとに進むので、線路力が大きい人は、長いリンクを作れば、駅を介さないので移動力が小さくても遠い先に進むことができます。
■「乗車人数」は定数の4人にしておきたいところ。このゲーム、乗客を先に確保するという意味で、いつでも客を拾える状態にしておきたいです。私は、乗車アクションと降車アクションをともに2をキープすることが多く、これだと定数の4と相性がよく、2アクションつまり一手番で4人乗せたり4人降ろしたりすることもできます。(勿論、3の方がいいのは事実ですが笑)
■「補充」アクションも、乗降者数に合わせておいた方がよく、「補充」→「乗せる」の2アクションなら、駅に通勤客を残さずに済みます。補充は、袋からランダムで取るのですが、通勤客の新駅が初めて建設された時、その色のミープルが袋に混ざるので、バックビルドの構成は可視できます。この「補充」→「乗せる」の一手番がいかにもオルレアン的で、運要素でありながら、ある程度狙いも付けられるというわけです。
■あくまでも一例ですが、この極平均的な「2ユニット戦略」はオススメです。何かしらパラメーターで特化して戦略を組みたいところですが、全てのアクションが大事になっていて、バランスを崩す戦略は難しそうです。
■「方向転換」アクションは、電車の向きを変えるだけで1アクション掛かります。できれば使いたくありません。電車は現時点での終点の駅に着くと、自動的に、つまり0手で、方向転換できます。
■これは、マップ戦略となりますが、写真のマンハッタンマップでは、グランドセントラルにあるハブ駅が特徴で、ここだけは、何本もの路線を発着させることができます。これを利用すれば、単駅同士を繋ぐような長い路線を作らず、一、二駅だけの路線を多く作って、すぐにUターンできるようにするのが得策です。
■ベルリンマップはハブ駅が無いので、各路線は長くなり、中終盤、「方向転換」ユニットが必要になってきます。しかし、線路を撤去し、自分の路線を切断することで、その場を終点にするという技があります。
最後に、ボーナスVPカードですが、これだけはちょっと雑です。説明書の通り、赤カードは戦略が壊れるので使いにくいですし、黄、緑、黒カードも強弱がありバランスが悪いです。私は、黄、緑、黒の中からそれぞれ7枚程に厳選して使っています。
もし、強いカードばかり手に入れた場合は、冒頭の「乗客&リンクVP」にこだわらず、「VPカードユニット」を埋め、カード戦略を狙う方が強いかもしれません。カード戦略をより強化するには、説明書に書いてあるヴァリアント、セットアップ時にブースタードラフトをすると相性がいいです。
ベルリンとマンハッタンで全く違うゲームができますし、珍しい両面レイヤー構造と、重なると美しい透明タイルのデザインは、サービス満点です。
とにかく、ロボットのパラメーターを上げていくゲームではありません。「必要最小限のロボットで、どの程度、通勤客を運ぶ時間に充てられるか」。主役は通勤客、人間達です。