二人プレイ時の感想を書きます。
ティナーズ・トレイルは、19世紀に鉱山で栄えたコーンウォール州で採掘会社の社長となり、銅とスズ鉱山を掘り当てて商売する競り要素のあるゲームです。
2008年に発売された原作を「比較的今風に」リメイクチューンしたのが本作ということですが、筆者は古い方は未プレイです。
4ラウンドに渡って行われる鉱山テーマの本作の特徴は、大きく二つ。
「ランダム要素」と「時間トラック」です。
まずはランダム要素を解説します。
プレイヤーはまず、分割されたマップからひとつの鉱山を選び、どれだけ銅とスズがとれるかわからない中で鉱山を得るための競りを行います。
競り買ったプレイヤーはその鉱山の採掘権を得ますが、鉱山の性質は様々で、たくさん鉱物がとれるものもあれば、採掘の邪魔になる水ばかりが溢れかえっているものもあります。
鉱山を得たら、採掘効率を上げたり、邪魔な水を排水するなどのアクションを行い、実際に採掘して銅やスズを得ます。
こうして各プレイヤーが一通り決まったアクションを終えると、そのラウンドで掘った銅とスズを「全て」売却します。
しかしこの銅とスズの価値は、ラウンドの最初にダイスで価値が決まります。スズは比較的安定していますが、銅は2〜10£と二倍以上価値に開きがあるので、価値が低い時に売ってもほとんど利益になりません。
採掘したラウンドで全て売るルールのため、じゃあ次のラウンドまで掘るのを待とう、という話になるのですが、必ず価値が上がる保証がないランダム要素となるため、実際にダイスを振るまで正解が分からないのです。
そしてラウンドの最後に、所持している£を勝利点に変換する投資フェーズがやって来ます。これも悩み所で、前述したように鉱物の価値も鉱山の価値もランダムなため、いったいどれだけカネを残しておけばいいのか正確に知る術がないのです。それなのに、ラウンドを追うごとに変換効率は下がっていくため、なるべく早いラウンドで勝利点に変えておかなければどんどん得点の機会が減っていきます。しかも勝利点はこのフェーズでしか獲得できないため、絶対的に売却アクションは必要なのです。
このように、不確定要素が強い投資を各フェーズで行う非常にスリリングな駆け引きが展開します。したがってほぼランダムゲームといった内容なので、アブストラクト寄りが好きな人には耐え難い設定かも知れません。
もう一つ重要な要素が、時間トラックです。
プレイヤーは10あるアクションポイントをトラック上で管理するのですが、手番はそのトラック上を最も進んでいない人から行っていきます。
重要なのは「パス(早上がりしてこのラウンドのアクションを終える行為)」が存在することです。
このゲーム、前述した投資フェーズの変換効率が、早くパスをした人ほど高いという性質を持っています。つまり「早くパスをした人ほど勝利点が貰える」と直訳できます。
しかもパスの順番が最も早かった二人(二人プレイでは最初の一人)が、裏になっている鉱山タイルをこっそり覗くことができるんです。更に次のラウンドの開始順も上がった順なのですが、特定のアクションが先着順になっているため、これが好きに選べるのはかなり有利な状態になります。ランダム要素の強い本作において、勝利点効率が上がるなど明確に有利になるのがパスであり、その順番は重要な要素となります。
ただし残されたプレイヤーは、鉱山の競りを競争相手が少ない(あるいはいない)状態で始められるため有利だったり、アクション回数も早い人より多いわけです。どこで切り上げるかのジレンマが常にプレイヤーを悩ませます。
先々が不透明な状態で競りや投資を行い、アクション数を抑えてまで次のラウンドで有利に立つべきか選択する…その時々での投資家としての判断力が問われる、ある意味とてもリアルなプレイ感が楽しめるわけです。
またカードを使ってこれから競りを行う鉱山の内容を、手番プレイヤーだけがこっそり見れるアクションもあります。あまり利益の出ない鉱山であれば、入札してきた相手に買わせてしまうといったブラフめいたプレイも可能。
ここまでの説明で少し難しいゲームのように感じたかも知れませんが、実際に遊んでみると気楽に運に任せるパーティーゲームのような感覚がベースにあることが分かります。
アクション自体は、鉱山の水を排水して、採掘効率を上げて、いざ採掘する、という行為だけで長考するような箇所はありません。
一番楽しいポイントは、毎ラウンドぐらぐらと上下する銅とスズの価値に一喜一憂したり、自分や他人のめくった鉱山が酷いものだったら一緒に笑ったり、運に任せて思い切った投資をしてみたり…「どう転ぶか分からないランダム性に対するリアクションを楽しむ」部分ではないかと。そして運良く見込みが当たった時に、非常にスッキリとした爽快感が得られます。銅の価値が最高の時にガッポリ売りまくれるとめちゃくちゃ気持ちいいです。
終わってみると意外といい勝負になってたりして、戦略も運も楽しい方向にキチッと機能していて、ああ、面白いゲームだな〜これ凄いな〜と納得してしまう素敵な体験になっています。
あと競りゲーなのに二人でも全然面白いです。ランダム性がどぎついのがリプレイ性にも繋がっていて、遊ぶたびに違った展開になる冒険のようなゲームですね。
コンポーネントはかなり豪華で、ほぼ全てのリソースやトークン類は個性的な形状の木駒になってジャラジャラと入っており、一部にはかわいいプリント入り。大きめで渋い地図の描かれたメインボードもかっこいいですし、カードもザラザラのエンボス加工。
しかも2種類の拡張のための追加ボードや木駒だけでなく、ソロプレイ用のカードまで付属しています。
今まで様々な中〜重量級のゲームを購入してきましたが、「安っ」と率直に思いました。かなり長く遊べる作風かつ、物質的なボリュームも満載だからです。
インストの時点では「難しそう」と感じますが、遊んでみると理解しやすく、のめり込める作品と思います。
90分ゲームですが体感的にそういった重さはほとんど感じないので、是非とも気楽に遊んでみて下さい。