多くのレビューではフィギュアがすごいが内容も良い、思ったよりルールが少ない、ガチの戦闘ゲーム、交渉要素が強い、などの意見が目立つ。
ブラッドレイジとの比較も気になる人も多いだろう。
比較的狭いマップ内での陣取り、戦闘のゲームで最近のものといえば、そのブラッドレイジをはじめ、ケメト、サイズ、イニシュそしてルートなどが思い浮かぶ。これらと比較しても、領土の侵略と維持が勝利にそのまま繋がるわけではなく、幅広い戦略性を有する作品だ。
重厚なコンポーネントに比してルールは意外とシンプルである。BGGのウェイトは3.3であり、テンポの良さと相まってギリギリ重量級に足を突っ込んでる程度に感じる。おなじくBGGでメカニクスは17登録されており、実際プレイしても、多様性を持つことを実感できる。
とりわけ同盟・交渉とアクション時のバリアブルフェイズオーダー(プエルトリコのような)、戦闘におけるビッドなどの要素が目を引く。
勝利点の獲得も独特で、戦闘に勝利するのは当然として、収穫アクション施行時の各地域のマジョリティ(アクション時点で一時的にでもマジョリティを取っていれば良い=スモールワールドっぽい)、兵が死亡した時の勝利点獲得(ブラッドレイジでお馴染みである)などがある。
これにラウンド毎の契約となる同盟(ストラグルオブエンパイア風?)に、カタンも青ざめるくらいの自由度の高い交渉が可能となっている。
勿論弱点がないとは言わない。それでもゲームとして大きく破綻することなく、時間を忘れて楽しめることが素晴らしい。エセ日本風のアートとも相まって(どちらかと言うと中国的に思える)、気のおけないプレイヤー同士とであれば、単なる勝負以上のものが体験出来るだろう。
なのであるが、逆もまた真なりである。これらの特徴は欠点にもなり得る。
まず、大前提として各プレイヤーが目指すのはあくまでトップである。1位のみが勝者。ここにおかしな感情が入るとうまくない。
毎ラウンド、自由意志で決定される同盟も特定のプレイヤーが連続して外されると厳しい。そのあたりは状況に応じたフェアプレイが求められる。
連戦連勝で勝利点がっぽり、となるとヘイト値が上がる。実際には勝つと金がなくなるのでそれは難しいが・・。負けるが勝ちという諺があるが、ライジングサンではその境地も必要である。言い換えると、正攻法のみで勝つのは難しい。すなわち、初見殺し的な側面を持つゲームともいえる。
その辺り、ブラッドレイジとも共通する部分も多いが、ブラッドレイジのがやや小粒で直球勝負的だ。ブラッドレイジはアクションカードをプレイヤー間でドラフティングするが、ライジングサンは共通のアクション山からMTGのブレインストームのように選択する。またライジングサンは戦国時代っぽい謀略や裏切りがあり、よりインタラクションが強く、メンタルゲームでもあるが、独特のユーモアが感じられるタイトルである。
余談となってしまうが、このゲームを遊んでいると、いろいろな日本のことわざが想起される。さきほどの負けるが勝ちもそうであるが、仏の顔も三度まで、地獄の沙汰も金次第、損して得取れ、など。
様々な要素をブレンドしたマルチ。さすがに最近では価格も買いやすくなってきている。私達が日本人であるからこそ思わず笑ってしまうような要素もある。多くの方に体験して欲しい。